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Leader Column Vol.13
北海道新幹線の活かし方「各所に生まれる 新しいかたちに注目」
2016年4月25日
 待望の北海道新幹線の開業がいよいよ目前に迫り、青森県内や道南地方各地は開業に向けた最終準備に余念がない。
 思い起こせば、筆者は、高校時代だった2010年12月に地元青森で東北新幹線全線開業を迎えた。新幹線が開業するにも関わらず、地元が盛り上がっていないことに危機感を覚え、級友と共にまちづくり団体「クリエイト」を立ち上げ、地域の活性化に向けて、観光情報サイトの運営などを行った。開業前夜には「高校生がつくる東北新幹線開業前夜祭」を実施した。クリエイトはその後NPO法人に移行し、延べ120名を超える高校生が活動に参加してきた。
 ところで、北海道新幹線開業の報道に違和感を覚えている。新幹線開業といえば、開業によって期待される効果や開業地域などがテレビや新聞でクローズアップされてきた。しかし、本開業に限っては、時短効果の乏しさの指摘など、ネガティブな報道が目立つ。
 クリエイトでは、「クリエイトまち塾」という地元高校生対象のまちづくり社会教育プログラムを展開している。これはまちづくり活動と並行して、まちづくりの勉強会や議論を月1回実施することで、高校生の主体性や創造性を高めることをねらうものである。まち塾の今年度のテーマは「北海道新幹線開業を活かしたまちづくり」であり、勉強会や議論もこのテーマに即したものを実施している。そのため、高校生と新幹線について議論する機会も多いのだが、ネガティブな報道を意識してか、開業効果について「全くない」と断言する者もいる。開業によるJR北海道の負担増加など負の側面ばかり報道されているが、果たして効果は全くないのだろうか。
■新幹線開業は「地域課題の在庫整理」
 筆者は新幹線開業が「地域課題の在庫整理」の機会になると感じている。東北新幹線全線開業当時、青森県内では、「県民のもてなし力向上」キャンペーンや地域資源を再発見しようという取組などがさかんに行われていた。テレビ・新聞に目を向ければ、「ストロー現象」やら「人口流出」の懸念を伝える報道がされていた。しかし、ホスピタリティや人口流出の問題は、新幹線開業により生まれたものではなく、昔から潜在していた地域問題が新幹線により顕在化したものである。更に、メディアがこのことを大きく取り上げることで、地域住民の諸問題に対する危機感が高まる。ホスピタリティについては、現状に満足している地域は多くないので、課題に挙がりやすい。
このことによって副次的に「新幹線開業の当事者」拡大という新たな価値が生まれる。住民ボランティアによるまち歩き案内ツアー「あおもり街てく」は東北新幹線全線開業を契機にスタートし、これまで7230名を受け入れ、現在28名の住民ボランティアが活躍している。
本開業にあたっても同様の動きが広がっている。「津軽海峡マグロ女子会」(マグ女)は、自分たちを、休むことなく泳ぎ続けるマグロに擬え、本開業によりこれまでより強固に結ばれる青函地域を盛り上げる活動を展開している。観光関係者のみならず、銀行員や自治体職員も参加し、青森・道南合わせて70名近くで活動し、開業を心待ちにしている。
 新幹線開業といえば、可視化しやすい所要時間や観光客数の側面から効果を論じがちだが、地域づくりの面でも大きな効果があると考えられる。
■若者の力で「一挙両得」
 旅行客の志向が変化し、大型施設や文化施設の見学を中心とした旅行から、人との交流や地域の人びとの息遣いが聞こえる旅行が近年好まれていると感じる。
 北海道新幹線に際しても、既存の枠にとらわれない新しいスタイルでの誘客や観光プランが必要であり、筆者は、地元の若者の活用を提言したい。
 2月20日に面白い試みのツアーが実施され、話題を集めた。「短命県体験ツアー 青森県がお前をKILL」は1泊2日で、昼食にラーメンを2杯食べ、夕食には塩辛や漬物などしょっぱい青森グルメを地酒と共に堪能する、正に短命県を体験するものだ。青森県民には欠かせない「雪かき」体験も組み込まれている。青森県の魅力をいわば自虐的に発信するもので、テレビやインターネットで大きな反響があった。このツアーは、地元学生が考案したもので、参加者は摂取塩分量に驚きながらも青森の食や文化を満喫した。
 2013年度に青森県がクリエイトと協力して実施した「中南地域ワカモノ温泉旅促進事業」でも、試験勉強の場として湯治宿を活用するアイデアなどが挙がった。
 地元の若者の力を活用するメリットは主に2つある。1つは柔軟な発想と突破力により、これまでになかったアイデアが生まれ、実現されるということである。もう1つは、若者自身の地域愛着の醸成につながるということだ。若者世代は地元に無関心になりがちであるし、身近すぎるゆえに地元の魅力に気づかないことも多い。誘客方法や観光プランの検討が地元の魅力を見つめ直すきっかけとなり、地域愛着の醸成につながることが期待される。つまり、「アイデア」と「若者の地域愛着」の一挙両得なのである。
誘客方法・観光プランの検討に限らず、ご当地グルメなど、地域の新しい魅力づくりにもこのことがいえる。地元の若者を取り入れることで、その地域の風土を活かした創造性あふれる商品やサービスが生まれるはずだ。
■開業により生まれる「新しいかたち」
開業を前に函館・青森を軸とした周遊観光への期待が高まっている。この裏付けとして、北京首都航空は新年度、青森空港と函館空港に杭州便を就航させることとしており、中国人観光客の周遊観光を意識したものとなっている。
 青森函館間は開業により約1時間で結ばれ運行本数も増えることで利便性が高まる。観光のみならずビジネスや医療、教育など幅広い連携をする「津軽海峡交流圏」の形成をめざし、青森県は「λプロジェクト」を展開している。これを好機に青森と道南地域の連携はより深まるだろう。
 また、開業の恩恵は、函館との距離が一層近くなる東北の下にも届く。例えば、開業により仙台函館間は2時間30分、盛岡函館間は1時間50分となり、それぞれ従来から1時間近く短縮され、各地域の観光需要増大など様々な新しい可能性が期待される。
 交通インフラに目を向ければ、JALとJRが「片道新幹線&片道航空機利用商品」を発売する。旅客輸送のライバルが連携し、新しい旅のかたちを提案している。
 前述のように開業を契機に新たな組織を立ち上げ活動する人も多くいる。本開業は、様々なアプローチから人びとや社会に誘発を与えている。開業を契機に「新しいかたち」が各所で形成されるだろう。これこそが北海道新幹線による最大の開業効果である。



(この原稿は「週刊トラベルジャーナル2016年3月21日号(特集:北海道新幹線の活かし方)」に寄稿したものです。字数調整の関係上、誌面と異なる場合があります。)
久保田 圭祐
  • 高校2年生のとき、高校生団体「クリエイト」を設立。2014年4月からは特定非営利活動法人あおもり若者プロジェクト クリエイト理事長。
  • 1992年青森県生まれ。古川中学校、青森南高校卒、慶應義塾大学総合政策学部4学年在学。
  • 中学・高校時代は演劇部に所属し、高校2年次には主演演劇作品が第42回東北地区高等学校演劇発表会で優秀賞一席を受賞し、第4回春季全国高等学校演劇研究大会に出場した。趣味は旅行、飛行機
  • このほか、青森県庁「活力と魅力あふれる東青地域づくり検討会議新幹線全線開業賑わい部会」委員などを歴任。
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